大連「ロシア風情街」の虚構

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大連の観光名所にロシア風情街(俄罗斯风情街)という場所がある。大連駅の北東にあるこの地域は古くからロシアによって開発されており、当時の建物が現在もいくつか残っているため現在は観光地化されている。

 

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ロシア風情街の入り口には東清鉄道汽船旧址(1901)が建っている。大連市と友好都市の関係にある北九州市には、この建物を模して建てられた北九州市立国際友好記念図書館があるらしい。

 

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正面にはダーリニー市役所旧址(1900)が鎮座している。石畳の团结街の両脇には土産物屋が軒を連ねている。

 

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ロシア風情街に残るロシア時代の建物は先に挙げた二建築以外には、大连船舶技术学校として使われている塗装の剥げたみすぼらしい屋敷くらいしかない。残りは皆「俄罗斯」風のイミテーションに過ぎない。

 

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この一見教会に見える「北珠宫」という建物は真珠販売店らしい。

 

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ロシア風情街では近年に建てられた土産物屋の建物はそれなりに管理されているが、肝心のロシア時代からの建物は半ば打ち捨てられている。大連が日本の統治下になった後、このダーリニー市役所旧址はヤマトホテルとして使用され、夏目漱石が宿泊したこともある歴史的な価値を持つ建物である。しかし、外壁の塗装も剥がれたまま周りを工事用のシートで囲まれた状態で放置されているその姿は、きらびやかな電飾で飾られた土産物屋の様子とは対極的だ。

 

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 ダーリニー市役所旧址のすぐ裏に隣接する建物は取り壊されていたものも、外壁が微妙な感じに残っていた。不審火とかが起こりそうな雰囲気だ。

 

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ロシア風情街から裏道に一本入ると日本時代に建てられたと思しき古びたアパートメントが建っていた。どう考えても観光客が立ち寄るべき場所ではない。

 

大連のロシア風情街の歴史的建築が無視され、新たにロシア風で建てられた土産物屋がメインストリートに立ち並んでいる光景は、現在広東省開平の赤坎鎮で進行中の再開発計画を連想させるものだった。赤坎鎮の歴史的な建築群は今後しっかりと修繕されていくのか、それともロシア風情街のようなただの虚構へと変貌を遂げるのかはこれからも注視していきたい。